相続 その1

10月9日火曜日

3連休でマスター出来るはず。と思って携帯をスマホに代えたが甘かった。4日目の今日、お店に飛んで行きアラームの設定を教えてもらう始末。明日のゴルフのためにも。前の機種に戻そうかとも考えるが、1ヶ月は頑張ってみようとも思う。昨日など、妻に送ったメールが息子と娘に行ってしまった。娘からはすぐに(何なの)って、返信が来たが、息子は知らん顔。多分、(どうせスマホに代えて悪戦苦闘しているのだろう)ぐらいに思っているに違いない。今朝出勤して聞いてみたらやはりそうだった。沈着冷静で、推理力がある。ならば良いが、たんに、冷淡では困る。僕に対しては構わないが、若い調査員にはもっと優しく接してもらいたい。

相続 その1

平成2年、世はまさにバブルの真っ最中。数ヵ月後その名のとおり泡と消える日が来るとも知らずに、皆が浮かれている頃だった。O社長の話「いやあまいったよ。今朝起きてみたら4億円儲かっててさー」昨日買った株が値上がりしたらしい。S部長の話。毎晩歌舞伎町を連れ回されていた僕が、何時になっても店の前で待っているお抱え運転手を気遣って、(部長、いい加減に帰してあげたら同ですか)と言うと、部長曰く「いいんだ、あいつの給料知っているか300万円やってんだぞ」

え^と言って、じゃあしょうがないかな。と思った僕だが、その部長から「福田、何時までも探偵なんかやってないで俺のところに来い。1年辛抱すれば田園調布に家が建つぞ」張ったりでもなんでもない。事実、1年ぐらい前、下駄履きで面接に来た男が今では部長になり、田園調布に土地を買い、家を建築中だった。そのクラスの人は一杯居て、夜中中飲み歩きトラブルを起こすものだから、或る時、会社で(歌舞伎町出入り禁止)のおふれを出したほどだった。

或る日のこと。「ちょっとご相談したいことがあります」という女性からの電話。僕のことを知っているらしい母親からの勧めで来るという。時間の約束をして待っていると、少しやつれた感じながら、品の良い整った顔の女性がやってきた。ご他聞にに漏れず(夫の女性関係)いわゆる素行調査の依頼であった。話を聞いてみると極々簡単な調査のように思えた。不動産会社を経営する夫は全く家に帰らず、赤坂のニューオータニを定宿にしているという。部屋に女性を連れ込むのか、ホテルに泊まっている態にして、女性のマンションに行くのか。探偵社にとって、(朝飯前)の調査で、1日か2日で終わるはずである。

思ったとおり、青山の会社からマルヒを尾行し、1日で女性宅は判明した。当時は、オクション(数億円のマンションのこと)ばやりだったが、中でもバブル紳士たちが競って購入した(広尾ガーデンヒルズ)の1室を、家賃月額150ま万円で賃借し、六本木の高級クラブのホステスを住まわせていた。女性の名前は(弘美)「とにかく、主人が何処に帰るかだけで良いんです」依頼人の希望する結果が出たので早速報告することにして、事務所に来てもらった。調査料は30万円と決めてあったので、当時の調査としては小さなもので、報告は部長の池沢に任せるつもりだった。ところが、依頼人が(どうしても所長さんにお会いしたい)と言ったらしい。仕方なく待つことにした。

「やっぱり」と言って唇をかむ姿が何とも言いがたい風情を醸し出していた。年の頃は30代の後半か。中年の女性の色気みたいなものに含まれる情念を感じさせた。

僕は、さっさと済ませて雀荘に行きたいと思っていたが、母親の手前もあるし、そっけなくも出来ない。また、依頼人も席を立とうとせずしんとしている。ーーーーーー