探偵日記


2024・03・30 土曜日 ☀




暑いぐらいの陽気である。ただ、木曜日の京都、三重の強行軍がこたえたのか目が覚めても起き上がる気力が無い。今年に入って、このような状態が続いている。80歳、という年齢はこんなものだろうか? それでも、午後、事務所に行く。「探偵」もしんどい商売である。




空飛ぶ依頼人 4




連絡をするとすぐに依頼人から「明日伺います」と返事があり、本日13時の約束をして事務所で待っている。几帳面な人なのだろう定刻にやってきた。もう大きな子供も二人いる。というのに、何処か少女っぽい雰囲気もある依頼人のN夫人は僕の部屋兼応接室のソファーにちょこんと座っている。          (やっぱり奥さんの思ったとおり彼女が居ました)僕は、まず結論から言って、報告書を彼女の前に差し出した。夫人は、パラパラとページをめくり、夫と女性が移っているページを見ながら、何故かほんのりと笑った。調査費用の精算を終え、「ありがとうございました」と言った後、「所長さん、この二人を不幸にして頂けませんか」と言う。こうした意味の発言は良くあることで、驚くことも無いが、依頼人の言い方があまりにも直截的で、僕はとっさにその発言の意味が分からなかった。夫の浮気の証拠を見せられた主婦が、まず言うことは、(どうしたらいいでしょうか)であり、行き着くところは家庭を守りたい。であり、たん的に言うと、夫とその相手女性を別れさせたい。に尽きる。その場合、僕は、弁護士に依頼して相手の女性に損害賠償(俗にいう慰謝料)を請求する方法を伝える。但し、これであっさり別れたケースは殆ど無い。まあ、火遊び中の二人に,じょうろで水をかけるほどの効果はあるだろうが。依頼人も大した効果を望めないことは分かっているが、とりあえずは正攻法で行きましょう。と言ってみるのだ。しかし、この依頼人は、夫と相手の女性を不幸にしてくれ。と言う。この漠然とした言い方に、とっさに応えることが出来なかった。          僕は、(奥さん、探偵だって、何でも出来るわけではないし、法律に違反するようなことは出来ませんよ)と言った。すると、依頼人は「そうでしょうね」と言って、黙り込んだ。・・・・・・