賃貸屋の朴

探偵日記 7月29日月曜日雨

今朝は所用で神田まで行く予定があり、朝食の後すぐにシャワーをして事務所へ。9時50分所長(息子)と待ち合わせて某社を訪問した。帰り道の会話で、当事務所の関係者N君が昨日ホールインワンを達成したことを知った。(ふ^ん、それで勿論保険には入っているんだろうな)彼はゴルフの申し子みたいな奴で、僕の事務所には入る前はゴルフ会員権の販売を業としていた。腕前はシングルで僕など太刀打ちできないがプレッシャーに弱い面もあり、途中のちょっとした会話で崩れることもある。昨日のコンペは、プロゴルファーで、前女子プロ協会会長の樋口久子さんや、シニアの徳永プロも一緒だったらしい。これから、記念品のプレゼント等物入りが予想される。ましてや、錚々たるメンバーなのでチャチな物というわけにはいかない。所長曰く「いや、保険に入ってなかったらしいですよ」との由。数年前、僕のゴルフ仲間がコンペでホールインワンをしてしまった。彼も保険に入っていなかったので大分苦労したらしい。それでも、メンバーやその他のゴルフ仲間にもれなく電波時計を贈った。僕らは(すぐに保険に入っておくように)アドヴァイスした。彼も「うん、そうする」と約束した。ところが、およそ1ヵ月後、また僕と一緒の時にホールインワンを達成した。おめでとうを言う前に、みんなで、(オイ、入っているんだろうな)と聞いたものだ。しかし、返事はノー。彼は、泣く泣く再度みんなに記念品を贈り、翌日、早速保険に入ったが、以後、そんな兆しも無い(笑)

N君の場合はどうするんだろう。正午になっても事務所に顔を見せない。頭を抱えて寝込んでいるかもしれない。


賃貸屋の朴 1

最近、不動産の契約に立ち会うことが有って、2年前の調査依頼を思い出した。依頼人は横浜の不動産業者の若社長。マルヒは都内のやはり不動産業者だった。許可番号は古くもう30年以上経営しており、一般的に言うならば信用できる会社だ。ただ、調査に着手してみると現社長はつい最近変わっていた。更に調査を進めてみると、マルヒは登記簿上の住所に居住しておらず、その住所には部下が住んでいた。純白だったマルヒがグレーゾーンに入ってきた。調査のきっかけは、Kという不動産ブローカーの持ち込んだ売り物件に係わる話だったが、その物件を斡旋し購入した依頼人の顧客がまんまと騙されたというものだった。僕は、(へ~今時そんなことがあるのか)と不思議に思った。対象物件は東京都中野区のワンルームマンション1棟、所有者は、新宿区内で不動産の賃貸業を営む韓国籍の男、朴。売買価格は2億5000万円。全室入居しており、利回りを考えれば(買い)の物件だった。

これはうまい話だ。と思った若社長は顧客の地主の買い付けの承諾を得て、横浜市内のM銀行で契約を交わす段取りとなった。実を言うと、その過程で、一方の仲介業者の社長に500万円を貸していた。若社長は、「取引が済んだら全額返済する」と言う言葉を信じた。当日、M銀行の応接室に現われたのは、仲介業者が2社、朴の代理人と称す人物と司法書士。依頼人側は、依頼人と買主の代理人。代理人はキャッシュで2億5000万円を持参していた。買主の代理人は、権利書無しで、売主本人が立ち会わないことに不満を述べたが、先方の司法書士が「大丈夫です。私のほうで朴さんの本人確認及び意志を確認していますから」と言うひと言で契約が成立した。-------------