探偵日記

探偵日記 10月19日木曜日 雨

秋の長雨。といって、昔から秋雨は続くとされているが、今年は特別のような感じである。小学校の頃から、雨の日は休んでもいい。というのが養母の考えだったから、僕も大威張りでずる休みした。或る雨の日、こたつに入って養母と花札をして遊んでいたら、何やら外が騒がしい。耳を澄ますと、担任が数人のクラスメートを連れて見舞いに来た。慌てた養母は、急いで布団を敷きセータを着たままの僕を「早く寝なさい」と言って押し込む。やたらと頭の大きい先生の後ろから小さな顔がいくつか見える。子供心にもちょっぴり恥ずかしかった僕は布団のもぐって寝たふりをしたが、先生について来たやつらはみな僕の子分みたいなものだった。
しかし、大人になって、就いた職業が「探偵」では、雨だからや~めた。というわけにはいかない。車両を使えない場所での張り込みは立ちんぼしかなく、雨の日も風の日も雪の日も現場に張り付いた。それでも後年、何度か調査員に(こんな日は仕事なんてするもんじゃあないやめよ~)と言ったこともあるが、その度に見張り番に睨まれてた。ただ、雨の日の尾行はやりやすい。マルヒも雨や傘を気にして後ろの注意が散漫になる。特に車の場合、失敗することはまずない。