探偵日記 08月25日 日曜日 晴
今日は僕の探偵人生の大きな分岐点になる。この年で少々おかしな表現だが、(折り返し)である。何度も書くが、昭和43年、確かな目標もなく、日々無為に過ごしていた時、当時の帝国興信所(今の帝國データバンク)に勤務していた叔父に「やってみるか」と誘われこの世界に入り、数年後、神田の「東京探偵事務所」に移った。実際にはここの半年で自分の一生が決まったようなものだが、昭和46年独立。そして、平成、令和と50年に及び探偵稼業と関わるのだが、9月1日から事務所の形態を大きく変えることになった。75歳という年齢は本来ならばもう隠居してもいい年であるし、友人らは全員といってよいほど第一線から退いている。「現役」というと格好がいいかもしれないが、肉体的には確実に衰えている。
これからの自分が楽しみでもあり、大いに不安でもある。
すると、マルヒが部屋に入って間もなく僕の目の前を妙齢の美女が通り過ぎた。目で追ってみるとエレベーターホールに向かう。調査員に、(あの女性が何号室に入るか確かめてくれ)と指示。調査員の報告によると、女性が部屋をノックしたらマルヒがドアを開け招き入れたらしい。(当たった)探偵はしばしばこんな場面に遭遇する。大げさに言えばこれが「勘」というやつなんだろう。よく部下から(どうして分かったんですか)と聞かれるが、説明できる程の根拠があるわけじゃない。勘であり、ひらめきのような類だろう。
待つこと6時間、マルヒの議員と女性は別々にロビー階に降りてきた。勿論その前に、部屋を出る二人の写真は撮影済みである。僕は、もう帰宅するだろうマルヒは部下に任せ女性を追尾。とりあえず出勤した銀座のクラブを確認した・・・・