嘘 その4

一昨日に続き昨日も朝6時起きになった。手早く朝食を済ませ、さあ、出かけよう。と、思っていたら依頼人から「母は足が悪いのでタクシーを使うかもしれません」と、連絡が来た。本日の調査は、若い調査員二人に任せるが、対象者を知っているのが僕だけなので、(本人特定)だけ僕がやることにしていた。車両の用意をしたかな?と思い、調査員のS君に連絡すると「いいえ」と言う。自宅のそばに駅があるので、多分電車を利用するだろう。と、勝手に考えたようだ。

仕方なく、僕が車で現場に行くことになった。依頼人が、朝9時半頃出るでしょう。と言うので、調査員らには、9時に現場。と言っておいた。僕も、小一時間あれば十分着くだろう。と高をくくり、7時40分頃家を出た。すると、踏み切りで散々待たされ、主要道路に出たら意外と混んでいた。8時35分、依頼人から「今仕度を始めました。もうすぐ出そうです」との連絡が入った。(かしこまりましたあと5分ほどで到着いたします)と応え、調査員に電話する。「現場です。勝手口のほうから監視しています。」と言う返事。ほっとした。僕の事務所では、依頼人と約束した時間より1時間前に現場に着くよう指導している。

5分後、現場に到着。二人と打ち合わせする間もなく、80歳とは思えない、矍鑠とした老婦人が表玄関から出てきた。大通りでタクシーに乗る。この日は計3回タクシーを乗り継がれたが何とか終えて、若い調査員にドヤ顔が出来た(笑)

さて、あの嘘つき男はどうしてるかな。



嘘 その4

それとなく店内を覗いてみると、依頼人は僕と会っているときには決して見せない(女の顔)で、楽しそうにおしゃべりをしている。ほかの3人も時に大笑いしながらよく食べ良く飲んでいるようだ。マルヒはというと、始終穏やかな表情で主に依頼人に話しかけている。すでに2時間以上経過しているのに出てくる気配は無い。

やっと、4人がぞろぞろ。って感じで店から出てきた。後で聞いたところ、勘定はマルヒが支払ったらしい。(先行投資かな)と思ったが、下衆の勘ぐりってこともある。4人は二次会にカラオケに行く。依頼人はすまなそうにメールしてきた。(了解)返信し、僕は、後を調査員に任せて退散した。高齢者には立ち張り(立ちんぼで張り込むこと)は厳しい。もう足が張って我慢の限界である。

しかし、今日でマルヒの概要は判明するはずである。どんな名前で、勤務先は何処か。僕は、マルヒを観察して、多分サラリーマンだろう。おそらく家庭も持っているに違いない。と推測した。詐欺師とか、極悪人には見えなかったが、依頼人を心から愛しているふうにも思えなかった。真実を知り、落胆する依頼人を想像し、少し重い気持ちでネオン瞬く銀座の町に入った。--------