嘘 その5

翌日、、事務所に行くと昨日のスタッフは誰一人来ていない。あれぇ徹夜になったのかな?と思っていたら依頼人からメールが届いた「昨日は遅くなってすみません。私たちは11時頃新橋駅で男性と別れましたが、二人はまだ何処かで飲むような話をしていました」と言う。その後どうなったか分からないが、それから飲みにに行けば終電に間に合わなくなる可能性が高い。(まかれたかな)と嫌な予感がした。

昼過ぎにチーフの勇一から電話がかかった。相変わらずぼそぼそ話し始める。その報告によると、想像したとおり午前2時くらいまでふらふらされたらしい。連れの男はタクシーで帰ったがマルヒは漫画喫茶で夜を明かし、朝、勤務先と思われるS新聞社の建物に入ったという。これではマルヒの現住所は分からない。勇一は、今日退社後を尾行します。と言う。(うん分かった。じゃあそれまで寝てろよ)と言って電話を切り、顛末を依頼人にメールする。(というわけで、もう少し待って下さい)と言うと、依頼人から「分かりました。ご面倒をおかけします」と、返信があった。

最近は、依頼人とのやり取りをメールで。ということが多くなった。戦中派の僕にはそれこそ面倒くさいが時の流れには逆らえない。結局、こうした手法に慣れつつある自分を感じる。しかし、調査員の報告を聞いて、僕はまったく別のことを考えていた。(ちょっと面白いな)S新聞は、我が国最大の宗教団体の関連会社であり、保守系の政党をも有する巨大組織である。勿論、面と向かって相手にはしたくない。まさに、像と蟻が喧嘩するようなものである。

マルヒがその建物に入ったということは、当然ながらそこの関係者であり歴とした社員かもしれない。そうすると、慶應義塾大学卒業という話も疑わしい。むしろ、やはり関連の深いS大の可能性のほうが高くなってくる。昨日のうちに住所の特定はできなかったが、調査は90パーセント終わったようなものである。後は、縺れた糸をほどす様な作業を行えばいい。

ところが、翌日、調査員から「夕方から張り込み0時までやりましたが奴は出てきませんでした」という報告が入った。--------



9月6日木曜日

特に忙しいわけではないが、一つひとつの調査に手こずって思うように進まない。調査期間が長引いても報酬が上がるわけでもないので、最近イラッとすることが多い。特に、現在ある調査に思いっきり振り回されている。女性だが、何がなんだか分からない人物だ。

あ~あ(笑)