探偵日記

探偵日記 04月22日水曜日 晴のち曇り

何時ものように今日も虚しいち日が終わった。何時まで続くんだろう。今日、医療関係者の話を聞いた。彼は僕が怖がりなのを知っているからネガティブなことばかり言う。でもまあ、実際に大勢の人が亡くなってるのだから、あながちジョークとも思えない。じゃあどうすればいいのか聞くと、マスクをする、不要不急の外出をしない、ことぐらいのようだった。しかし、僕はマスクが嫌いだし、家でじっとしていられない性分だから始末が悪い。でもまあ、今は生きているから良しとしよう。

新宿・犬鳴探偵事務所 4-22

依頼人は確か胸のあたりにギブスをしているはずである。多少動作がぎくしゃくするのはそのせいであろう。彼女の母親が昨日犬鳴に言った言葉を思い出す。1か月ほど前のこと、彼女は住んでいるマンションの5階から飛び降りたという。本当に不幸中の幸いだったようで、途中、敷地内に植えられていた樹木にバウンドしたため落下時の衝撃が和らぎ、しかも、体勢が変わったため顔を打たず胸を強打したらしい。普通、建物の4階から落ちたらまず助からないという。したがって、5階から落下した依頼人の生存は奇跡としか言いようがない。そしてその人は今犬鳴の目の前に悄然と座っているのだ。犬鳴はその辺の話はせず、事務的に依頼人が望む調査を引き受け、数日の時間を頂いた。
依頼人の夫は世田谷で不動産業を営んでいるが時はバブルの真っ最中、湯水のように大金が入り、ご多分に漏れず遊興に走った。その結果、家に帰らなくなりここ数か月は西新宿の京王プラザホテルを定宿として遊びまわっているらしい。依頼人はひょんなことから夫の浮気を察知し、きちんと確認もせずにかっとなって自殺を図った。・・・・・