詐欺 その4

9月20日木曜日

今日(といっても正確には明日のことだが)は、静岡県に出張する。沼津、熱海、御殿場をまわり、主に内偵(聞き込みのこと)調査を行う。最近は、個人情報保護法とやらで、何を聞いても答えてくれない。数日前、九段のとあるマンションを訪問した時のこと、ちょっと屁理屈を言いそうな管理人がいて、丁寧に挨拶をする僕に、入館証明を書けという。僕は仕方なく、訪問した日時に続き、氏名、電話番号、職業、訪問した理由等を書き、(105号室を何度訪ねても不在である。何時頃来れば会えるか)といってスタートした。ところが、管理人曰く、例によって、「個人保護法によりお教えできない」と言う。僕は角度を変えて質問した。(105号室は見たところあまり広くないようですが、1ルームですか)管理人「それも個人情報ですから答えられない」と言う。結局何も答えてくれないままで終わった。

じゃあ何故、入館証明にかこつけて僕の個人情報を書かせたのか?少々怒りを覚えたが、見るからに馬鹿で不幸そうな管理人の男。僕は静かに礼を言って退散した。世の中狂っている。個人情報保護法の解釈を曲解しているのだ。こんなこともあった。ある時、福島市内で番地を頼りにある家を探していた。ところが、飛び地になっていることもあって、なかなか探せない。ちょうど郵便配達がやってきたので、(すみません。0丁目×番地はどの辺りでしょうか)と聞いてみた。郵便配達曰く、「個人情報保護法でお教えできない」とのこと。さすがに、温和な僕も怒った。(何を言ってるんだ。俺は個人の家を教えろって言ってるわけじゃあないぞ。所番地が何故個人情報なんだ)少し声を荒げて詰め寄ったら、「じゃ絶対僕から聞いたことを内緒にして下さいよ」と言って、「あそこを左に曲がって十メートル行ったところです」と、説明してくれた。

この先、我が国もこんなことをしていたらどうなるんだろう。閉塞感ばかり拡大して、人心の通わない砂漠のような国になってしまわないか、大いに心配である。

さて、明日事務所に来ないので、詐欺その5を、前倒ししてご報告する。(詐欺)辞書を見るとーー(わざと嘘をついて人に損害を与えること)とある。当該事件の主犯赤岡明則は、嘘をついて、3000億円を取得した。



詐欺 その4



そんなことが有って、僕も、事件や赤岡の置かれている位置が少しづつ判ってきた。

要するに、暴力団は、赤岡の身柄を押さえれば隠匿している金員を奪うことが出来る。と思っているようだ。極めて単純な発想だが、ある意味に於いて的を得ていると言えなくもない。少なくとも、バブル期はこういうシンプルな考え方や行動が功を奏しにわか成金が数多く輩出された。当該事件も、まことに信じられないことだが、T銀行の支店長代理氏が、定期預金を偽造し、これを担保に、ノンバンクが貸付を行ったというもので、驚くなかれ、某日、まだ二十代の若造が社長を務めるペーパーカンパニー(法人登記はあるが実態のない会社)に、100億円融資する。勿論返済の意志もなく、社長さんは義務や責任感の欠片もない。その大半が赤岡の懐に入り、支店長代理は、金融の手数料5パーセントを無税で徴収。勿論、返済の義務もない。

したがって、赤岡は、T銀行の支店長代理と、融資を受けた会社がしたことで、自分はあずかり知らないことだ。と、主張しているのであった。僕も、赤岡の言い分を聞いて、(検察は立証が困難ではないかなあ)と思ったりした。調査は、裁判で赤岡に有利な証言をさせたい人物の所在の確認、当時湯水のように使えたお金を貸し付けた相手の所在や、現況の把握、などが主なものだった。

その中の一人(金森泰造)について、徹底的に洗ってくれと指示され、同人の尾行に加え、家族関係他、当時、僕がもっとも得意としていた特殊調査を実施した。--------