探偵日記

2月20日水曜日晴れ

今冬はどうしてこんなに寒いのだろうか。それとも年齢のせいか、などと考えてみる。去年までの僕は、どんなに寒い日でもコートを着たことが無かった。だから周囲の人は皆驚いている。意気地の無い僕は、雨や風、雪は勿論のこと、特に寒いのが苦手だ。日々の生活はもとより、ゴルフも例外ではない。心も体も萎縮してまともにプレーできない。コンペのように前々から決まっているものはキャンセルしないが、新規に誘われても大概お断わりする。
それでもタイちゃんの散歩は欠かさず続けている。意気地は無いが心優しい僕は、彼の気持ちが痛いほど分るから。

タイは思う。「福田家の一員になって11年、GWとお盆は往復2200キロの長距離ドライブが出来て、田舎の家に行けば好き勝手に出来る。広いリビングで走り回れるし、綺麗な夕日も見れる。しかし、東京での生活は、一日中狭い家に閉じ込められ、リビングに下りてゆこうものなら、17才のネコ(りぼんちゃん)に苛められ、生傷が絶えない。お姉ちゃん(くつしたちゃん)は普段一緒に遊んでくれるが、機嫌が悪いと時々猫パンチされる。

だから、毎朝のお散歩がボクの生きる希望といっていい。パパは前の晩どんなに遅く帰っても6時には起きて連れて行ってくれる。時々、理由も無く強引にコースを変られるが1時間たっぷり遊んでくれる。大も4~5回して、おしっこは最後の一滴まで絞り出す。そして家に帰れば美味しいご飯が待っている。そんじょそこらの家では食べれないほど美味だ。ボクの兄弟たちにも食べさせてあげたい。と、何時も思う。

ただ、歳のせいか最近目が霞んで、秘かに思いを寄せているハッピーとすれ違っても分らないことがあるし、やたらと頭をぶっつけたりする。この間は、思い切り左目の上を打って医者通いをした。幸いボクんちの前がヤブだけど動物病院なのでママがすぐ連れて行ってくれるんだ。」

と、思っているかどうか分らないが、散歩の時、どっちに行こうか迷って、訴えるように僕を見る目が何ともいじらしい。頭のあたりが真っ白になって、目も白内障が大分進んできたようだ。多分僕より早く死んでしまうだろうが精々大事にしてやりたいと思う。彼は、僕が強引にコースを変えることを訝しく思っているようだが、それには理由がある。これも僕たちの責任なのだが、他の犬と遊ばせることをしてこなかったので、遊び方を知らずに成長した。タイなりに、遊びとは、吠えたり飛びついたりするものと思っているみたいで、他の犬が迷惑そうにするからである。そんな老犬を連れて老人の僕が散歩できるのは何時までだろうか。-----