探偵物語 21

探偵日記 7月31日木曜日 晴れ

昨夜は阿佐ヶ谷駅前の旬菜「成海」で夕飯を食べた。数日前、マスターが「やっと見つかりました。バレリーナです」と言っていた。やっと、と言うのはバイトの女の子が入ったということ。早速、その子を見てやろう。ということで、昨日、店に行ったのだ。午後7時、狭く急な階段を上がって入店。先客があり、かしましいおばさんの三人連れ。いたいた。3歳からバレーを始め、もう子供達に教えているというその子は、30歳の手前か。ほっそりとした体型で容貌もまずまず。マスターもご満悦の態(もう逃げられないように手なんか出すんじゃあないよ)とは言わなかったが、なにしろいい男だから心配である。誤解しないように断っておくが、マスターが不良と言うことではない。むしろ女房の尻にしかれているぐらいで、二人の子供も大層可愛がっているらしい。ただちょっと老婆心まで。という程度のことである。1時間ちょっと居て帰宅。
今朝は、昨夜深酒をしなかったので比較的すっきりと目覚め、少々早いかなと思ったが、涼しいうちに済ませようと思って、4時10分散歩に出る。ところが(散歩命)のタイちゃんが歩こうとしない。家の前で足を踏ん張って抵抗する。強く引っぱって行こうとしたらリードがするりと抜けて、自由になったタイは、(しめた)と思ったかどうか判らないが一目散に走り去ろうとする。幸い、まだ車が走っていない時間帯だが、大きい通りに行けばそうはいかない。追っかければ余計逃げる犬なので、(タイちゃんバイバイ)と言うと僕の所に戻ってきた。お散歩の時間、〆て5分。(笑)11時20分事務所へ。

探偵物語 21

若妻失踪事件の後日談だが、勿論、僕の所に山口組が来ることもなく、依頼人のひひじいじは、居所が分っても連れ帰すことも出来ず、婚姻届などを偽造した行為で被告の身になったようだが、同じように偽装離婚した妻名義で、逃げた若い妻に対し、夫との不倫行為に対する共同不法行為者として(損害賠償請求)の訴えを起こしたりした。その頃になると、先輩妾の母親も依頼人の元を離れ、若い男と同棲を始めており、依頼人は、母子に愛想をつかされた格好であった。(蛙の面にション便)ではないが、元、刑事のAさんを通じて、(調査料は払うからもう一度調査をやって欲しい)と言ってきたが、二度と相手にしなかった。その後、依頼人がどうなったか知る由もないが、もし、あの若いお嬢さんが普通の結婚をしようとした時、仮に、調査会社が調べれば、ある程度のことは判明するだろう。したがって、婚姻無効の判決が出たとしても戸籍の汚れはいかんともし難く、一生ついて回る。依頼人の社長も罪なことをしたものである。