探偵日記

探偵日記 6月08日月曜日 晴れ

昨日は、「岩出和也」という若い演歌歌手のライブに行った。というのも、天国に一番近いスナック「ほろよい」のチーママ美穂乃63歳。(今まで居た82歳のチーママが勇退したため美穂乃ちゃんが昇進した)が熱狂的なフアンで、(どうしても行ってくれ)と、懇願されたからである。まあ歌はそこそこに上手いしルックスも良い。もうかなりの数のCDを出し、稀にテレビにも出るようだが、いかんせん決定的な魅力に欠ける。しかし、根っからの歌好きとみえ自分の歌だけでなく、三橋美智也から五木まで幅広く披露してくれた。その後、例によってほろよいへ。
今朝は4時40分に、久しぶりにタイちゃんを連れて外に出る。2週間サボった罪滅ぼしに好きなように歩かせたら、1時間20分経過。(ねえ、帰ろうよ)と頼み込んでやっと帰宅できた。少し休んで土曜日に入会したスポーツジムへ。初日なのでインストラクターの説明を聞き、マシン3つ経験した後、プールで30分歩行と形ばかり泳いで終了。8時半、やっと朝ごはんを食べ、10時に出勤した。あ~メッチャ疲れた。

教師と教師 6

緊張と少しばかりの不安におののきながら正午を迎える。受付から(犬鳴さんという方がお見えです)連絡を貰い、1階にある応接室で会った。犬鳴という探偵の年齢は自分と同じぐらいか。一見した限りでは普通の会社員のようにも見えたが、穏やかな話しぶりの中に油断なら無いような鋭さを感じた。「実はお恥ずかしいのですが妻のことで」と切り出すと、相手はさほど驚いた風もなく(いつ頃からご不審を持たれましたか)と聞いた。小山内が、自宅や勤務先から離れた場所で妻の車を目撃し疑問に思った旨を告げると、探偵は単純明快に(小山内さんが思ってらっしゃるとおりでしょうね)と応え、更に(調査をするとそのような結果が出ると思いますが、その場合どうなさるんですか?)と、意外なことを聞いてきた。そんなことは探偵に関係ないはずで、そうなったらそうなったでその時に考えれば良いことだ。と思っていたので、「それはどういうことでしょうか」と聞き返した。すると探偵は、(ああ、いいえ、勿論、我々がそこまで介入するつもりはございません。ただ、調査結果の利用方法によって、多少調査のやり方といいましょうか、掘り下げる度合いが異なってまいります。これは依頼人が女性の場合に多いのですが、ご依頼される段階で、良くおっしゃることなんですが、離婚の意思はないし、相手から慰謝料を取る気も無いようなことを言うのですが、後になって訴訟に発展して、弁護士に、調査が不十分。とクレームをつけられることがありますので)と言う。

それからさらに、小山内さんの件は所謂素行調査で、その結果、99パーセント奥様の不倫が判明します。ただ、相手の男性とラブホテルから出てきた証拠があれば、有無を言わせず離婚する人も居れば、先ほどの話のように離婚は避けたい。と思う人も居ます。じゃあどうするか。というところで色々と事情が出てくるのです。もし、小山内さんが男の沽券に係わると考え、奥様の謝罪も受け付けない。とお考えなら、そういった端的な調査結果で十分ですが、人の気持ちは変わるものだと思うのです、僕はそれで構わないし、変わっても良いと思います。しかし、一旦、公にしてしまうと後の調査は困難です。奥様も相手も用心するでしょう。と申しますのは、最近の裁判官というか、裁判所の考えも変わってきて、「動かぬ証拠」の採点が厳しくなってきています。これは最近の経験ですが、報告書に上半身裸で寝ている写真を添付して出したにも拘らず裁判官は(直ちに不倫とは認めがたい)なんて言って採用されませんでした。まあ、これは極端な例でしょうが、仮に奥様の相手が独身で、彼の部屋を訪れる形だとしたら、容易に不倫認定されません。

そうこうするうちにあっという間に1時間経ってしまった。古株の小山内は多少の勝手は許される立場にあったが、根が真面目な性格である。そろそろデスクに戻らなければならない。そんな気配を察したか探偵は、(良く考えてからご依頼下さい。こうして一度お目にかかったので、次は電話のやり取りで良いでしょう。お気持ちが決まったらご連絡下さい。)と言って、今にも席を立ちそうな感じである。小山内は大いに反省をした。いつだって優柔不断な態度で機を逃してきた。実は、小山内的には、明日調査をして貰いたいと思っている。昨夜妻から、(ねえ貴方、明後日少し遅くなるわよ)と、宣言されていた。-----------