偽装結婚 その2

探偵日記 10月22日月曜日

三日ぶりの事務所。相変わらず暇で全員集合。2班に別れランチに行く。男性軍はとんかつ、女性は?

僕は昨日のゴルフコンペ(4組)で予定通り優勝。(笑)賞金7,000万円と競馬も当たり1億5500万円の配当を得て機嫌が良い。だから、ランチの代金、2700万円は僕が払った。パーティ後のカラオケ代や、ホステスたちのチップが、2億円ほどかかったので±0 まあしゃあないか。



偽装結婚 その2

中内と称す依頼人は50歳半ば。身長155センチ、やや小太りでおつむはかなり後退し、お世辞にも美男子とはいえない。ドアを開け事務所に入ったところで呆然と立ちすくんでいる。僕が(どうぞ)と言って、応接室に招きいれなければ、ずっとそこに居ただろうと思えるほど融通の利かない感じである。

ソファに腰掛けてもまだだんまりで、見方によれば怒ったような表情にも見えるし、場違いなところに来て不安そうにも見える。僕が(弁護士さんから概略はお聞きしました。それで、中内さんはどんな調査をお考えですか)と、問いかける。依頼人は、何をどのように言ったら良いのか分からない風で、暫しもじもじしていたが、「お金もほとんど取られたし」と、ボソっという感じで話し始めた。

話し始めたといっても、こちらが質問することに、かなりの時間差がありやっと答える。ので、調査依頼が完了するまで2時間以上費やした。要するに、結婚相談所で紹介された女性と婚約したものの、お見合い料、婚約成立金、婚約指輪、結婚指輪、花嫁の希望で、挙式を(モナコ)で行いたいから、その費用一切、ドレス代、靴3足の費用、エステ費用、お色直しの洋服代、等々、合計3,000万円を支出したという。ところが、1ヶ月以上前から連絡が取れなくなり、とうとう、女性の携帯電話が(着信拒否)の設定になっているのに気づき、(おかしい)と思い、弁護士事務所に相談に行ったらしい。

依頼人の話「母一人子一人の家庭で、自分は大学卒業後地方公務員になったが、女性との縁が無く、気がついたら50を超えていた。どうしても結婚したくて、色んな紹介所を訪れたが成立しなかった。或る日、新聞の広告を見て電話したら、(すぐ来なさい)と言われ、指定された新宿の喫茶店に行くと、クローバーという結婚相談所の所長さんが待っていて、(ちょうど良い人が居る。会ってみるか)と言われ、その日のうちに、やはり結婚を希望しているという「伊東弘美」という女性とお見合いした。相手も僕を気に入ってくれたようで、とんとん拍子に話が進み、1週間後、婚約にこぎつけた」と、言う。それから、あっという間に、前述のような理由で3000万円要求されるまま払ったらしい。

良くそんなお金があったものだ。と思っていると、察したかのように、「退職金の前借と、不足分は母親に出してもらった。」と言う。この間、僅か3ヶ月。池波正太郎言うところの(急ぎ働き)である。僕は、無駄を承知で聞いてみた。(領収書なんかあるの)「いいえ、所長さんが特別に安くしてあげるから領収書は出せないと言われました。」(依頼人)お金は全て結婚相談所の月形という女性の所長に手渡したという。--------