それで、その月形という結婚相談所の責任者はなんと言ってるの?と聞くと、依頼人は「あの子性格が悪いから駄目ね。他にもっと良い人が居るから紹介する。って言ってます。」と言う。じゃあ、伊東に渡した3000万円はどうなるの?と聞くと、「さあ、でも月形さんは良い人です。本当に僕のことを考えてくれて、最近は(男を磨け)と言って、エステを勧めてくれ、ヘアースタイルも変えなきゃぁって言って、専門家の女性をつけてくれました。」
僕は、この人何処まで人が良いんだろう。と、少々腹立たしく思ったが(じゃあ、将来他の相手を紹介してもらうとして、伊東についてはどうしますか?あっさり諦めるには大金でしょう)と言うと、「弁護士さんも同じ意見でした。それで、内容証明郵便を出したいのですが伊東さんの住所が分からないんです」と応える。(エっ住所が分からないって、婚約したんでしょう。)依頼人は僕の言葉を聞いて、にんまり笑って、「教えてくれなかったんです」と言う。更に、年齢も、職業も、出身校も、何も知らないと言う。職業については、飯田橋辺りの建築設計事務所に勤務しているらしい。とだけ、年齢も「まだ40才には成っていないと思います」とのこと。親族のことや経歴、故郷のことも何も知らない。(じゃあ、月形さんに聞けないの?)と言うと、「月形さんも良く知らないらしいんです。」と応える。
僕はうんざりしたが、I弁護士の紹介でもあるし、依頼人のことも少々哀れに思えてきたので、(じゃあ、伊東をおびき出しましょう。彼女達はお金が欲しいでしょうから、理由をつけて、お金を渡したいって言えば必ず現れるから、伊東が貴方と別れた後を尾行しましょう)と、提案し、まだ口の中で「もうお金が無い」とボソボソ言う依頼人を無視して、まず月形に言う台詞などを指導し、会う日時が決まったら連絡するようにと、ほとんど命令口調で伝え、この日の面談を終えた。
翌日、I弁護士に報告する。弁護士も笑いながら「それしかないでしょう。完全に結婚詐欺だから、身元が判明したら刑事告訴しましょう」と言う。弁護士と僕の考えは同じである。この種のことは、仮に、民事に持っていった場合絶対と言って良いほどお金は返ってこない。むしろ相手側にすれば、民事になればのらりくらりと引き伸ばせるし、第一、刑務所に入らなくて済む。ただ、問題は、警察がなかなか取り上げてくれない。詐欺事件は、途中で示談されることが多く、折角の捜査が無駄になるからである。つい最近もこんなことがあった。ある会社の経理部長が1億円近く横領し夜逃げした。単純な手法の横領だったので、証拠も揃い、夜逃げした経理部長も、僕の事務所で発見。フイリッピン女性と優雅に生活している状況を把握してあった。ところが、弁護士を伴って、弁護士の作成した告訴状を持って訪れた所轄の警察がなかなか受理してくれない。すったもんだの末にやっと受理してくれたのは良いが、二課(詐欺や横領、贈収賄を扱う知能犯係)の刑事が、書類の束を見せてのたもうた。「ほらこんなに溜まっているんです。まあ、時効までにはやりますよ」だってさ。これが我が国の司法の現実である。
中内という依頼人から連絡が入り、今週の金曜日、新宿の喫茶店で、伊東と月形所長の三人で会うことが決まった。依頼人が、(もう少しお金を渡したい)と言ったら、月形は上機嫌で、連絡がつかないはずの伊東と、すぐに会う約束を取り付けた。という。--------
探偵日記 10月23日火曜日
今日は台風の影響で荒れ模様の天気。朝ベッドで、ものすごい風の音と、雨足を聞き、(あ^あワン公の散歩どうしようかな)と思っていたが、5時に外に出ると雨の風も嘘のように止んでて、タイちゃんは元気良く飛び出した。ところが、少し歩いたところで立ち止まり意気消沈している。さっきまでの雨で、他の犬の匂いが消え、面白くないらしい。(じゃあお家に帰る)と聞くと、それも嫌らしい。仕方なくとぼとぼと歩くワン公に付き合って小一時間歩いた。
朝ごはんを食べて、死に来た病院、じゃあなくて、「河北総合病院」に行く。女医さんの建石先生とお話し、大量の血を採られた。先生が厳かにおっしゃる。「福田さんは立派な糖尿病ですから、これ以上数値が上がるようならお薬を出します。お酒が膵臓に影響を与え、インシュリンの出を悪くしていて、糖尿になっているんですから、とにかく、お酒は控えて下さい。」ハイハイ分かりました。と応え、会計を済ませて一旦帰宅する。べ~
車で外出。床屋さんに行って、午後3時前事務所に。-------