ところが、我が優秀な探偵事務所のコナン達が失敗した。一度しかないチャンスをものに出来ず、この日、マルヒ(伊東弘美)の住所を特定することは叶わなかった。
翌日、チーフの斉藤に詳しく聞いたが、状況的にやむをえなかったかな。と思わせる内容だった。依頼人と二人の女性は、喫茶店からレストランに移動し3時間余りをかけ食事を終え、まず、伊東弘美が依頼人と月形に挨拶を交わし立ち去った。この日は、月形の住所も確認したかったので、応援部隊を召集し、2班に分かれ尾行を開始した。主たる被調査人の伊東弘美は、新宿駅西口からバスに乗り、世田谷区内に入った、とあるバス停で降り、進行方向に向かって歩き始め、暫く進んだところで、やって来たタクシーに乗って走り去ったらしい。
(バスを降りてからしきりに後ろを振り返るものですから、警戒しているのかなって思い距離を開けてしまいました。)斉藤は頭をかきかき弁解した。僕は、(仕方なかったかな)と思ったが、斉藤には、(マルヒが後ろを振り返ったのは、タクシーに乗るためだったんだよ)と教え、調査結果を依頼人にメールした。依頼人は、こちらの失敗を咎めたり怒ったりするような人ではない。案の定「お疲れ様でした。明日、今後のご相談に伺います」という返信が来た。
しかし、一方のマルヒ(月形)の調査は成功し、予想通り月形が偽名であることも判明した。-------