先生その7

数日前から持病の鼻炎が酷い。僕は1年中のアレルギー性鼻炎で、特に春先やぶたくさの時期が最も辛い。最近も何かの花粉が飛んでいるのだろう。ただでさえ希薄な集中心が乏しく、この低い鼻を切って取りたいぐらいだ。



さて、それからの先生達はどうなったのだろう。教務主任の男性教師は、予想通り、月曜日から金曜日まで、学校を出ると真っ直ぐに帰宅した。年老いた母親の住む実家になど一度も訪れなかった。本来生真面目な性格なのだろう。駅前のコンビニで缶ビールを二つ飲み干すのも、惣菜を買って小走りに帰る姿も全く同じで、若い調査員達の失笑をかっていた。5日間こんな調子では能がない。と思ったので、家族構成と一人ひとりの様子を見るため、早朝より妻の出勤状況や子らの通学の様子を写真に撮り要点を調査した。子供たちはいずれも公立の学校に通学。妻も情報どおり横浜市立の某中学校に勤務していた。ちなみに、妻と本人の年収は合わせて2,000万円以上。立派な自宅は最近建てたもので借り入れは認められるものの、余力が感じられ、中流の生活を営んでいた。

それでも、依頼人と約束した慰謝料5千万円は右から左に払える金額ではない。他人事ながらどうするんだろう。と、思いつつ、その週の日曜日、今度は、JR横浜駅近くの喫茶店で依頼人と会った。-------