先生その8

今日は日曜日、でも、家でじっとしていられない僕は正午を待たず事務所へ。途中伊勢丹に寄って、好物のグレープフルーツと蜂蜜入りの梅干を買った。



横浜駅の近くにあるデパートの喫茶店で依頼人と会う。5日間の尾行調査と、マルヒの家族らの日常を、写真つきで報告書にまとめ読んでもらった。依頼人の女性教諭は、これで自分が完全に騙されていることを悟ったはずだ。それでも、報告書に添付されているマルヒの写真をじっと見つめる横顔に、奥深い女の未練が感じられた。口説かれて、不倫の挙句夫と離婚してまで得ようとした男は、結局妻子の元に帰っていった。僕に言わせれば当たり前すぎるぐらい当然の結果だ。「妻と別れて君と一緒になりたい」なんて言う男の言葉ほど信じていけないものは無い。正真正銘の男の僕が言うのだから間違いない。

やがて、依頼人は、「たまたまこの週だけ家に帰ったということは無いですか?」と聞いてきた。僕は、「そうかもしれませんね」と応え、「じつは僕もそんなこともあるのかなぁと思って、実家の周辺で聞き込みをしました。その結果、彼はもう1年以上母親の元を訪れていません」余計な調査だったが、調査員でもある僕自身が納得するためにも必要なものだった。僕は、調査員たちに、「どんな些細なことでも?と思ったら自分自身の気持ちが納得するまで調査を続けるように。」と言ってある。

この依頼人ともこれから先長いお付き合いになるだろうな。と感じながら話を続けたが、案の定,数年間時々お会いするような調査になった。