カーネーションその22

花ひろば及び真理子、それに山本の生活実態に関する調査はそれからも続いた。しかし、以前のように、例えば、1週間とか10日をみっちりやるのではなくて、4~5日に一回とか、時々様子を見る程度の調査で、前もって渡されている費用の範囲で粛々と行われた。2ヶ月程は大きな変化も無く、新しく真理子名義で借りたマンションの部屋で蜜月を送っているようだった。変化というものではないが、花ひろばの横の空き地はそのままで売買に関する動きは無い。また、「自分は一番大きいイBMWにする」といっていた山本だったが、相変わらず真理子の車を嬉々として乗り回している。

その車両の動きを見る限りでは、山本の日常は以前と同様で、大型スーパーの駐車場や公園近くの路上に長い間停まって、夕方になると花ひろばに帰って行く。2日か3日に一回世田谷の実家にも行っていた。或る日、実際に尾行した時のこと、新宿のスピード印刷店(名刺等を待っている間に作ってくれるところ)に立ち寄った。店内の様子を窺うと、(どうやら名刺の印刷を頼んでいるらしい)調査員の斉藤から報告が入った。その日の夕方。事務所に戻ってきた斉藤が(これです)と言って、僕に名刺の箱を渡す。(何だ)と聞くと、斉藤は苦笑いしながら(マルヒが注文した名刺です)と言う。一枚取ってみると、社名は「山大商事株式会社」勿論代表取締役社長はマルヒの山本である。しかし、本店所在地として記載されている住所は、山本が連日訪れ長時間駐車し、漫画雑誌を読みふける大型スーパーの所在地になっており、電話は、真理子が借り、二人が住んでいるマンションの部屋に設置してある真理子名義の電話だった。ためしに電話してみると、不在のコール音が虚しく鳴り続けるばかりだった。

斉藤は、マルヒが印刷店を出て、公園の横に車を停めてくつろいだことを確認した後、マルヒの見張り役を残し、印刷店に戻って(すみませんさっき名刺を頼んだ会社の者ですが、社長があと50枚追加して欲しいそうです)と言って、店長が「これですか」と言って見せられた山大商事の名刺を貰ってきたらしい。

探偵業法第七条二項 探偵はあるときには嘘つきにならなければならない。という定義がある(嘘です)

某日、銀座の小料理屋で依頼人と会う。テーブルの上にマルヒの「名刺」が置かれている。依頼人も苦笑して「山本はこれで何か詐欺でもしようとしているのでしょうか」と聞く。僕は、マルヒはそれほどの悪党ではないと思っている。いや、そんな能力も無い。と言ったほうが正しいだろう。マルヒのこの名刺を見るのは真理子だけ。マルヒは、最近何となく疑いを持ったらしい真理子を納得させるために、4千円を投じ、「国土交通省指定」の幽霊会社をでっちあげたにすぎない。この名刺を使って第三者からお金を騙し取るわけではないので、(可愛い)お遊びである。僕は、二人の関係はそんなに長くないな。と思っていたが、依頼人に、いたずらに期待させるのも悪いと思いこの日は何も言わず別れた。僕は、ある方法で、マルヒの母親のお金が容易に出せないように工作しておいた。ーーーーーーーーー



明日は、僕の地元阿佐ヶ谷のゴルフコンペ(サンサン会)に日。5月から改めて新年度がスタートした。それまで6だったハンデが改正され15になっている。皆は、15も有れば今度は僕だろうといって、毎回期待され馬券も売れる。前2回は見事に裏切ってしまったので、明日は頑張らねば。と思っている。乞、ご期待。(笑)