カーネーションその23

今日は祭日だが10時半ころ事務所に着いた。ブログの更新もしなければならないと思っているし、依頼人との打ち合わせもある。誰もいない事務所の自分の部屋(スペースといったほうがいい)で、昨日のゴルフの反省や、あさって水曜日のコンペに思いを馳せている。昨日もとうとう皆を裏切る羽目になった。なぜか得意なパットが入らない。目が悪くなっているのかな。と思ったり、やはり打ち方のせいかな。と思ったり忙しい。

今月は7回予定があり、そのほか検査入院の予定も有り何かと忙しい。月が変わればお盆の帰省もあって新しい事務所の活動も9月から本格的に成るのだろうか。



さて、花ひろばの真理子はどうしているのだろうか。

或る日の午後、S信用金庫世田谷支店の支店長室。テーブルを挟んで、支店長の小林と預金係の女性職員。対して、山本英夫婦が話しこんでいる。山本英は本件のマルヒ山本の実弟である。したがって、婦人は英の妻紀代。この日、夫妻は支店長の呼び出しを受け、何事かと不安な思いでやって来た。「実は、このところお母様のご預金がものすごい勢いで払い出しされています」小林支店長がそういって切り出した。支店長が英夫婦に伝えておかなければいけない。と思ったのは、先日300万円の定期を解約したばかりの母親が、まだ2週間も経っていない昨日、別の1000万円の定期を解約したいといってきたためである。

山本家はS信用金庫の大口預金者で、英の実父は総代を務めたこともある。現在も、有力な顧客であるし、英の会社の事業資金を支えている関係で、母親の預金が不審な状況にあることは看過できない背景も有った。支店長から聞くまでも無く、最近の母親の様子が変なのは夫婦も感じていた。英はともかく妻の紀代は以前から気を揉んでいたらしい。父親が死亡して、数十億の遺産を相続したにもかかわらず、あっという間に使い果たし僅かに残っていた不動産も街金の担保に取られ、競売にかかったのを英の会社で落札した経緯もある。たとえ勘当して山本家と無関係になったとはいえ、差し押さえや競売などという事実は山本家の名前に傷がつくばかりでなく、S信用金庫との取引にも少なからず悪影響を及ぼす。そんな中、最近頻繁に実家を訪れる実兄の様子に不安と危惧を抱いていた。

英夫婦は別棟に暮らしているが、子供が無いので紀代も毎日夫の会社に出勤し経理を見ていた。マルヒは弟夫婦の不在を見計らって母親を訪ねていたのだった。僕は、(ああ、それでマルヒはどうかすると実家の近くまで行きながら、すぐに訪問せず近くのコンビニなどで時間をつぶすことが良くあった。)と思い出した。マルヒは実家への出入りに妙に気を使っていたがその理由が判明した。

もともと計画性や責任感の欠片も無い山本は、この数年間は母親の持っているお金をあてにして生活していたらしい。母親のほうも(目に入れても痛くないぐらい可愛い長男)が泣きついてくれば、何をさておいても工面したし、今度はしっかり者の女性が結婚を考えてくれている。いつの世も(出来の悪い子の方が可愛い)という。

この日、S信用金庫世田谷支店で何がどのように話し合われたか詳細は分からないが、その日を境に、マルヒの懐はめっきり淋しくなり、同時に、真理子に対する態度も微妙に変化し、マンションの家賃や、車のローンも滞り、楽しいはずの新婚生活は一変した。ーーーーーーーーーー