昨夜一睡も出来なかった。特に悩みがあるわけでもないのに。加齢による現象なのか困ったものだ。ただ、そうはいっても、夢を見たような気がするので、もしかしたら少しは寝ているのかもしれない。朝7時半朝食。少し横になって10時過ぎに家を出る。今日は奥さんのリクエストで、伊勢丹でグレープフルーツとお味噌を買わなければ成らないので、車で出勤した。
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依頼人の会社を出て、帰路、感慨にふけった。「辛いだろうな」依頼人の心境をおもんぱかり、自分自身と重ね合わせてみた。何となく重い気持ちで帰宅する。
翌日から調査に入った。まず、真理子の確認のため「花ひろば」に行き、調査員らに、忙しく働く同女を見せ写真を数枚撮る。午後7時、再び現場に到着。直ちに尾行体勢に入る。真理子は、店を出てどんな行動を見せるのか、大いに興味をそそられる一瞬である。
ところが、事実はこちらの思いとは関係なく、拍子抜けするような状況展開を見せた。花ひろばの店内には、真理このほか同年代の女性がいて、店じまいの作業にかかっていた。そして、六十がらみの男性が一人。経営者と見間違うぐらいゆったりとした感じで、真理子や女性と談笑している。僕も調査員も(なんだあいつは)と思い閉店を待った。
午後7時40分、シャッターが閉まり真理子と店員らしき女性、それと件の男性三人が出てきて、仲良く近くの居酒屋に入る。1時間後、店員らしき女性が出てきて、花ひろばに停めてあった自転車で走り去る。居酒屋内を覗くと、真理子と男性が肩を寄せ合って焼酎を飲んでいるのが見えた。知らない人が見れば「夫婦」と思うだろう。居酒屋の店員らとも顔馴染みらしく、男性が時おり冗談を言って笑わせていた。-------