探偵日記 12月04日雨のち晴れ
朝5時に目覚める。4~50分ぐずぐずして、5時50分タイちゃんの散歩。雨上がりのせいで面白くなさそうに歩く。それでも、騙しだまし歩かせ3回ウンチをさせる。昨日から、タイちゃんの頭に傷があり出血している。おそらく、2匹いるネコのうちリボンがやったのだろう。それでも懲りないタイは、ネコと遊びたくて, 近寄ってはフーと怒られる。
今日は、16時に帝国ホテルで報告が1件あり、18時30分、銀座で、日本橋の社長と会食の予定。ランチは控えめに食べる。
あの橋から その9
夫の相手は同僚の女性、何が天涯孤独なのか分らないが、単身マンション暮らしをしているとのこと。しかも、我が家に極めて近い場所のようだった。というのも、夫の雅之が、「これから帰る」と言って、実際に数分で家に着いている。今までは、アルバイト先から帰って来ていたものと思っていたが、女性のマンションからだったことが明らかとなった。こうした生活はもう半年以上前から続いていたことも、雅之の言葉から推測出来た。迂闊だった。末子は自分の性格の大雑把な一面を悔やんだ。
(その人に会わせて欲しい)「その必要は無い」何度かそういうやりとりをしたが、雅之の態度は頑なで、末子の希望を頑として拒絶した。末子自身、その女性と会ってどうしたいのか、確たる信念も無く、ただ、夫をここまで夢中にさせる女性ってどんな人なのか、いってみれば、怖いもの見たさの心理なのだろうか、会えばきっと、より傷つき、(この人には勝てない)と思うかもしれない。いや、きっとそうだ。と思っても、どうしても自分の目で確認したい。それは、時間が経過するほど強くなった。
変な話だが、以前の浮気の時も、末子は(会わせて欲しい)とせがんだ。雅之は、実際に会わせてくれなかったものの、その女性について、微にいり細にわたって教えてくれたものだ。そのあと、似顔絵とやや太り気味の体形まで描いて見せてくれた。当時の末子は少し太っていたので、似ていないこともなく、何だか笑ってしまったことを覚えている。しかし、今度は「その必要は無い」の繰り返しで、一向に会わせようとしなかった。人間の心理とはそうしたもので、叶はないとなると無性に見たくなる。夫に、離婚を宣言され、今では、悪びれた様子も見せず堂々と朝帰りする雅之を見て、そのうえ、「将来君と生活する可能性は0,1パーセントも無い」とまで言われてもなお、末子は(離婚なんて絶対承知できない)と言って、毎朝、雅之のための朝食の用意も欠かさずにした。これを食べたら自分の負け。と言わんばかりに無視し続ける雅之と、まさに、我慢比べのような日々が続いた。——————