探偵日記 12月20日木曜日晴れ
昨夜は顧問弁護士事務所の忘年会に出席したあと、弁護士、税理士と歌舞伎町のクラブに行き、0時帰宅。今日は、日本橋の社長とランチの日、14時、事務所に。朝は、何時ものように6時に散歩に出かけた。睡眠不足で帰りの電車で居眠りをする。今日は早く帰ろう。
あの橋から その21
「これでいざという時の武器になるでしょう。弁護士に依頼して、この市村に損害賠償の請求も出来るでしょうし、ご主人との離婚調停にも有利になるはずです。」探偵の福田さんはそう言って、「じゃあこれで報告書を作成しますので明後日にでもお会いしましょう」と言う。夫の相手は小金持ちの独身女性、2~3百万円なら払うでしょう。と、探偵は言うが、末子は、お金なんか。と思っていた。しかし、あと2日で夫は間違いなく家を出るだろう。その場合、自分はどのような態度で居れば良いのか、このまま、何時戻ってくるか分らない夫をじっと待つのか、それとも。探偵の調査で実態ははっきり判ったが、果たして自分や子供たちが幸せに成れるのだろうか、釈然としないままラウンジを出た。
2日後、再び渋谷のホテルで探偵と会い報告書を受け取った。当初、調査費用は分割で、と言っていたが、何とか工面して精算した。探偵は申し訳なさそうに、「無理をしないで下さい」などと言っていたが、これで一件落着したので機嫌よく帰っていった。帰り際、「報告書に疑問点があれば何時でもお電話下さい。」と言ったが、末子は、(もう、この探偵とは二度と会うことはないだろう)と思っていた。福田と名乗る探偵が嫌になったとかではなく、自分の弱みというか、恥部を知られている。という抵抗感が働いていた。
腕時計を見るとそろそろ5時である。何となく上司の意見を聞きたくなり、彼の携帯にメールをしたらすぐに返信があり、「ちょうど仕事の切がついたのでそっちに行こうか」と言われ、そのままホテルのラウンジで待つことにした。誰でもいいから話したかった。自分の行き先が分らず、最初の一歩を導いて欲しい。そんな気持ちで待ち続けた。-------