探偵日記 11月18日火曜日 晴れ
昨日の散歩が短かったせいか、今朝は4時過ぎにドアをノックされ、1時間15分歩かれた。覚悟していたので好きなように歩かせたが、1時間過ぎたあたりで(タイちゃん帰ろう)と声をかけると、一目散に自宅方向に足早に歩き、(早く帰ってご飯食べよう)と言うと、一段と速度を速める。家に着くと足を拭いてもらうのがもどかしい感じでお茶碗に飛びついた。12歳と9ヶ月、我が家の皇太子はまだまだ元気だ。明日は、プライベートゴルフ。夜は、メンバーの見張り番同伴で、阿佐ヶ谷のフレンチで食事。明後日はボジョレーヌーボーの解禁日、日本人と中国人だけ有り難がって薄いワインを飲む日。(笑)なかなか休肝日がとれない。
娼婦 14
毎日毎日高級ホテルで過ごし、夜ともなれば、五つ星のレストランで食事を頂き、しこたまワインを飲む。彼は仕事があるので早く外出するが、佳枝はそのあと手持ち無沙汰になるので少しすると退屈してきた。ホテルには格好いい外人も沢山居て、まだ日本人しか経験の無い佳枝は、時に淫らな妄想をすることもあるが、その都度自分を戒めた。辺鄙な郊外での主婦暮らしから一変、今の夢のような生活は決して手放したくなかった。たまに、残してきた二人の子を思うことはあっても、(会いたい)と強く感じることは無かった。そんな時、母の言うように(私は結婚には向かない女かもしれない)と、改めて自分の性格を見直したりした。彼は、会社には行くものの、これといった仕事が有るわけでもなく、むしろ居ないほうが会社のためにはいいほどの存在だったので、すぐに帰って来て一緒にランチをすることも多かったが、稀に遠方に出張があり、佳枝は一人で大きなベッドで数日過ごさなければならなかった。
そんな或る日のこと、退屈紛れに昔の仲間の携帯に電話すると(お茶でもしようよ)という約束が出来て、久しぶりに池袋のホテルのラウンジで落ち合った。仲間の主婦は(しの)という名前で仕事をしていた。(ねえしのちゃん面白いこと無いかな~)佳枝は半分自慢げに言ったつもりだったが、しののほうは佳枝の(好き者)ぶりを知っているので、はは~んあの若い男じゃあ物足りないんだな。と考え、「だったら、時間の有る時だけ仕事しなよ。」と誘った。そんなつもりじゃあないんだけど。と思ったが、退屈しているのはその通りだし、初心な彼との営みに少々飽いていることも確かだった。結局その日はそのまま別れたが、しのはその後も何のかんのと言っては誘ってくる。佳枝も次第にその気になって、或る日とうとう事務所からの電話に承知して、懐かしい駅前のホテルに行った。
その日の客は中年のサラリーマンタイプの人だったが、佳枝は久しぶりに堪能し、何となく体も軽くなったような心地でホテルに帰ったものだった。
彼のその日の予定を何気なく聞いて、数時間あるときには必ず駅前のホテルで客を取った。そんなことが数ヶ月続いた或る日、何時ものように事務所から「佳樹ちゃん今日はどう」と、責任者から電話がかかり、承知した佳枝は胸を弾ませて指定されたホテルに向かった。---------