あの橋から その3

探偵日記 11月27日火曜日

昨夜は久しぶりに歌舞伎町で飲んだ。それでも、明朝の散歩が気になり、早々と切り上げ、22時には帰宅。ポケットから万歩計を取り出してみると、ピッタリ10000歩だった。珍しいなあと思い、朝血圧を計ってみたら、130-80なんと切の良い数字なんだろうと感心した。

少し早いかな、と思ったが、4時40分、妻の部屋からタイちゃんを呼び出し早朝デイト。じゃあなくて、お散歩。妻はまだ時差ぼけが治らず高いびき。1時間後、散歩を終えてタイちゃんを部屋に戻してもまだ気づかない。幸せな主婦である。8時前に朝ごはんを食べて、9時に家を出る。10時、日比谷の帝国ホテルで顧問先の社長とお茶。景気の先行きについて意見交換をする。仮に、自民党になっても1年は変わらないだろうというのが一致した考えであった。それでは困るのだが、11時40分事務所に戻る。



あの橋から その3

今思えば、二人目の子を身ごもったあたりから様子が変だった。それでも、妊娠中の末子は深く考えず勤務とおさんどんを上手にこなし、出産後も、むしろ夫婦関係を避けるほどで、夫に悪いな。と思いつつ日々何となく時間が過ぎていった。産休が終わりまた勤めに出るようになった或る日、自宅の電話に女性から電話があり、突然「奥さん雅之さんと別れて欲しい」と言われてことの顛末を知った。

女性は夫と同じ職場の派遣社員で、関係はおよそ1年前から続いているという。末子が何となく夫の様子に違和感を覚えた頃と一致した。女性との電話を切った後、色々思い出してみると点と線が符合する。帰宅時間がまちまちになり、アルバイトを理由に朝帰りすることもあった。末子の夫は、どちらかというと精力的で、末子が辟易するほどだが、(お腹の子にさわる)と思ったのか、この間は疎遠になっていた。女性は、「雅之さんと結婚したい」と言う。しかし、乳飲み子を抱えた今、夫を失うわけにはいかない。というより、結婚して初めて浮気されたショックで、体全体の力が抜けていくような絶望感に襲われ、キッチンに崩れ落ちるように座り込んでしまった。

後で、(そういえば女性の名前も聞かなかった)ことに気がついた。その日、深夜帰宅した夫に、女性からの電話を伝え、(きちんと説明して下さい)と迫ったが、夫曰く「2~3日待って欲しい。必ず答えを出すから」とのこと、末子は釈然としなかったが、お互い明日の勤めもある。と考え直し、週末まで待つことにした。------