探偵日記 4月2日水曜日 晴れ
天気予報が少しづつずれて、今朝も快晴。本当なら昨日の夜から降り出し、今日は雨のはずだった。特に予定はないがきちんとスーツを着て早めに出勤。電車から眺める景色は桜一色。特に、東中野を過ぎ、少し行った辺りの神田川沿いの桜は見事だ。近年のお花見はこんな感じで、車窓から見ることが多い。
会う人ごとに「少し痩せた?」と聞かれる。自分ではそうは思わないが確かに体に力が入らない。今朝は計って見ると1,5キロ落ちている。特に変調もなく食欲も旺盛だから心配はしないが、これが年齢というものなのだろう。めっきりスタミナが無くなり、ゴルフの飛距離もエッと思うぐらい飛ばなくなった。13日の月例どうしようかな。
メガバンク 2
早速、青柳氏に電話をかけ、翌日の午後4時、大東銀行の本店に行くことになった。そのやり取りの中で、明日は土曜日である。当然銀行も休みだと思い、犬鳴が(来週にでも)と提案したが、青柳氏の希望で明日の訪問が決まった。おおよそ、銀行マンは慇懃無礼な応対をするもの。と思っていたが、青柳という人はちょっと世慣れた感じで話し方も歯切れが良かった。一貫して総務畑を歩いているというので、かっては、総会屋等も相手にしていたのだろう。だとすると多少骨のある男かもしれない。犬鳴は青柳氏と話して、水元弁護士のときに感じた「金脈」を、改めて思った。彼の話し方は鷹揚だったがなるべく早く犬鳴と会いたい様子が伝わってきたし、彼の背後に何か切羽詰った気配も感じ取った。これは、後ろで誰かがアドバイスしていたとかではなく、言って見れば、探偵の六感のようなものだ。弁護士も、「彼個人のことではない」と言っていた。すると会社の問題だろう。犬鳴は明日の来るのが楽しみになった。
2月8日土曜日、朝起きてみると昨夜の雨が雪に変わり猛烈に吹雪いている。(まいったなあ)と思ったが、探偵が、天気が悪いので日を改めて。等とは言えない。遅い朝食を済ませ、家で時間を潰すより事務所に行こうと思い、時々外の様子を見ながら仕度を始める。雪は次第に激しさを増し、自宅前の道はすでに10センチ以上の積雪となっているらしい。支度をする犬鳴を見て、妻が、「貴方よしなさいよこんな日に出掛けるのは」どうせ麻雀にでも行くと思ったか非難の眼で外出を妨げる。(いや、どうしても今日来いって言う依頼人がいるんだ)と言うと、「でももう少し待ってみたら、その人も出れなくてキャンセルの連絡があるかもしれないじゃあないの」と応じる。犬鳴も半分は期待して、しきりに携帯を気にするが、今のところそんな気配は無かった。
午後3時20分、この頃になると、交通機関の乱れが相次ぎ、中には完全に運休している私鉄もあったが、犬鳴の住む中央線はかろうじて走っていた。遅延のことも考え、事務所に寄るのはやめて早めに家を出たため約束の時間より30分以上早く着いてしまった。大東銀行の本店は東京駅に近い丸の内にある。ここまでくれば、たとえ雪に阻まれようと5分で着くだろう。犬鳴は、丸の内側の地下道から、丸ビルに入りカフェでコーヒーを注文した。ーーーーーーーーー