メガバンク 9

探偵日記 4月10日木曜日 晴れ

今日は火曜日の検査結果を聞きに行く日。9時45分、少し遅れて駅前のつのだクリニックへ。こうした商売も営業的になって、医師が女性ならば、看護師や受付も10人近く居る全員が女性。「血圧を測りましょう」と言って僕のそばに来た看護師さんが「まあ、素敵なお色のジャケットですね。春らしくて。」などとお世辞を言うのも忘れない。先月はネクタイを褒められた。来月は何て言われるか楽しみである。やがて「福田さ~ん」と主治医に呼ばれ診察室に入る。「血糖値やヘモグラビン、中性脂肪、尿酸、の数値はいいですね。血圧も安定しているようですし。ただ、お酒はどうですか?肝機能が低下していますね。お酒を控えて下さい。」怖い顔で申し渡される。昨日、焼酎を8杯飲んだなんていったら何と言われるか。

調剤薬局でお薬を貰って、一旦自宅に戻って薬を置いて事務所へ。今日は夕方から勉強会。何の?


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一週間目、それなりに成果のある中間報告をすませ、まずは一安心。この日からまたマルヒ藤井鉄夫の行動調査を継続して行う。第二班は。相手女性の身元を解明すべく三番町のマンションに張り付いた。何しろ、近くに、英国大使館やインド大使館、それに、高級官僚たちが住む三番町住宅もあって、警備が厳しい。こういった場所は住民には良いが探偵泣かせである。張り込んで10分もしないうちに自転車に乗ったお巡りさんがやってくる。「すみません。住人の通報で来ました。」などと言って身分の確認をされる。幸い、「探偵業法」が出来てから、張込尾行や聞き込み(内偵)などの行為は正当なものとして認められているので、(実は・・)と言って訳を話せば立ち去ってくれる。とはいっても、本当のことを説明するわけではない。本件の場合、(ご依頼人のお嬢さんが行方不明になって、どうもこのマンションに住む男性の所に居るらしいって情報がありまして、指示によって、こうして張り付いているんです。)と言えば、将来刑事を希望しているお巡りさんは、何なら自分も加わりたい。ぐらいに理解を示して、「そうですかご苦労様です。でも、あまり目立たないようにして下さいね」といって立ち去る。また、場合によっては予め直近の交番に事情を説明しておくこともある。

しかし、女性の住むマンションはセキュリティが堅固で、メールボックスの場所までも近づけない。また、地下の駐車場から車で出られると判別しにくいため、労多くして、なかなか成果を得ることが出来なかった。木曜日、青柳氏から犬鳴の元に一通のメールが届いた。といっても差出人の名前や発信元は分らないようにしてある。青柳氏と犬鳴だけに分る阿吽のものだ。メールはある女性の履歴書で、下方に手書きで(新宿B)とある。ぼやけた写真だが、三番町の女性に似ていなくもない。すると、追っかけるように青柳氏から電話がかかってきた。「届きましたか」と言う。犬鳴が、(ハイ、ちょうど今見ているところです。あの女性のことのようですが新宿支店にお勤めだったんですか)と聞くと、「そのようですね、私も最初は気付かなかったんですが、上司が覚えていまして、藤井氏が支店長だった頃とダブっているんです。ま、もうとっくに退職しているんですが」これで、女性の身元が判明した。犬鳴は、丁寧に、(有り難う御座いました。これに基づいて精査いたします)と言って、通話を終えた。

張り込み中の調査員にこのことを伝え、(この名前で調べてみてくれ)と指示。数日後、公共料金の支払い名義人として、同女の部屋番号や入居年月日が判明した。またか、犬鳴はある感慨をもってそう思った。同女の住民票を取得し、本籍欄を見ると新潟県である。こんなことを言うと差別だとか偏見とお叱りを受けるだろうが、犬鳴が探偵になって数千件の不倫調査を経験したが、相手女性の出身が、顕著に北陸や東北地方に偏っていた。言い換えれば、関西や関西以西だったことは稀である。時々、(何故だろう)と考えてみる。しかし、今もって結論は出ていない。強いて言うなら、寒い地方の女性は(男性もだが)耐えることに慣れているのだろうか。簡単に言うと(辛抱強い)ということか。倫理観が乏しい。のではなく、「秋田美人」言われるように、色白の美人が多く、控えめな所も男性に好まれるのだろうか。いずれにしても、マルヒの不倫相手は、雪国の人だった。-----------