探偵日記
探偵日記 11月11日火曜日 曇り時々雨 タイちゃんと散歩に出た時はまだ雨は降っていなかった。1時間ほど歩いて帰宅。今日は少しゆっくりして11時に事務所へ。事務所に着いたと同時ぐらいにご依頼人から電話がかかって長話をする。浮気夫が(家を出る、離婚を承知しろ)と大騒ぎしているとの由。愛し合って一緒になり可愛い子供をもうけ、アットホームを築いてきたのに、何処で知り合ったのか判らないがよその女と仲...
福田政史の探偵日記
探偵日記 11月11日火曜日 曇り時々雨 タイちゃんと散歩に出た時はまだ雨は降っていなかった。1時間ほど歩いて帰宅。今日は少しゆっくりして11時に事務所へ。事務所に着いたと同時ぐらいにご依頼人から電話がかかって長話をする。浮気夫が(家を出る、離婚を承知しろ)と大騒ぎしているとの由。愛し合って一緒になり可愛い子供をもうけ、アットホームを築いてきたのに、何処で知り合ったのか判らないがよその女と仲...
そうして1年ちょっと関わった美容整形クリニックの院長「出水聡」に係わる素行調査は終了した。報告書を何通出したか分からないほどの調査だったこともあり、8年以上経った今も、調査の内容や依頼人のことを時々思い出す。素朴な主婦だったが、内に秘めた女の性に何となく激しいものを感じた。折角手にした思いがけない「幸福」を、ちょっぴり美人だからといって、精神を病んだこともある女性に奪われた悔しさは、他人には計り知...
依頼人は、不服そうだったが最終的には僕の説得を聞き入れ、前田家を攻撃する作業はせずにすんだ。その後も、依頼人とは頻繁に会ったが調査をする必要も無いまま数ヶ月過ぎた。会ってする話といえばどうしても本件に関することになり、マルヒの院長がどうしたとか、ああしたといった内容で、加えて、前田恵子のことになった。それでも、依頼人から「明日の行動を見て欲しい」と言われれば、無碍に断る訳にもいかず単発的に慣れ親し...
およそ10日ぶりにパソコンの前に座った。パソコンを立ち上げる暗証番号こそ覚えていたが、ネットでブログを開くパスワードが間違ってて、何度もやり直した。何のことは無いハイホンが抜けていた。 8月10日午後1時、首都高「永福町」から高速に上がる。三鷹、八王子を経由、何時ものように、中央高速で、小牧から名神、吹田で中国自動車道に入り、1100キロを走り、11日午前4時、古里の家に着いた。愛犬のタイち...
自身を探偵と称しているが、僕の知らない顔だった。この時すでに30年以上この世界に身をおいている僕だが、狭いようで広いのか、はたまた、一般に知られざる業界故か面識の無い同業者は結構居る。Yもその一人かもしれない。(かもしれない)と思ったのは、果たしてYが探偵かどうか疑問だったからである。依頼人のもとに届いた手紙の文章や、わざとかえたらしい文体からある程度の年だろうと思っていたが、写真で見るYは、僕よ...
しかし、そんな調査をして、付録のような事実関係が明らかとなっても依頼人の利益に代わるようなものではなかった。僕も何となく達成感が感じられず、(もうやめましょうよ)というのだが、案外頑固な人で容易にうんと言わない。世の中には調査を依頼したくてもお金が無くて、探偵社のドアを叩けない人が山ほど居る。僕はむしろ、そんな依頼人のほうが好きで、(できる限りのことをしてあげたい)と思うのだが、タイミング良くそん...
四国の香川県で内偵を続けていた調査員から中間報告が入った。調査員は携帯の電話口で笑っている。(しょうがない母娘です。美容師のおふくろさんも浮気しています。)実は僕もマルヒの実家を知っている。長い調査になる予感があって現場を見ておこうと思い、飛行機嫌いの僕は、新幹線で岡山まで行き、連絡線で高松に渡った。マルヒの実家は、雑然とした地域の中にあり、木造2階建ての一部を店舗に改造し母親が美容室を営んでいた...
出水の行動は次第に大胆になり、自宅のリビングで前田に電話をかけ、次の休日の打ち合わせをする始末。夕食の片づけをしながら聞くともなく耳に入る夫の声は、最近自分と話すトーンとは全く違い幸福感あふれるものだった。 「とにかく変なの、前田と行くところは以前私と行ったところばかり、この間の札幌小樽もそうだし、その前の年は越前蟹を食べに福井に行ったし、今度は沖縄を計画してるみたい」と言って、依頼人は笑っ...
出水は当時カリスマ美容整形科医として、たびたびマスコミにも登場していた。後半には、秘書兼アシスタントの優秀な看護婦として、前田も加わり出水に寄り添った姿が映像になり流された。女優顔負けの美人である。テレビ局も重宝し、アナウンサーも前だにマイクを向ける回数が多くなった感があった。こんなテレビを見るのは辛いだろうな。と思っていたとき、依頼人が前述のような提案をしてきた。 確かに、出水のしようとし...
マルヒ、前田恵子に関する身元調査で、経歴の部分について再調査をしなければならなくなった。特に、看護学校を出て最初に勤務した付属病院時代に遡る。マルヒはこの時代に何らかのアクシデントに見舞われ、心を病み入院しているはずだ。僕は、四国で内偵(聞き込み)をしている調査員に、もう少し情報収集するように命じ、東京での調査を自分がやることにした。 このころになると、僕と依頼人は毎日のように会っていた。小...